「創作について」2021

 固有名詞を持たない人間を人物の塊として描いています。2020年からは見慣れた風景や日常のものからインスピレーションを得てきました。制作は、デッサンや写真を手掛かりにして自分の中に潜在的にある記憶や形態をさぐりながら進めていきます。その分身ともいえる心の形は絶えず動いて、何かができそうでできない、ありそうで探せない作業のやり取りです。具象と抽象の間を行き来しています。私を捉えた眼前のものは、自分の日常の空間にあるゆえに、劇的な存在ではないのですが、昨日何もなく通り過ぎた景色を今日は表現したいと思うそういう気持ちを埋め込んでいます。時間の経過と共に経験が熟成し、過ぎた時間とそれまでの経験値が今というその時に反応する。視覚から頭に入り心を揺さぶる。この時の内面のリアルを表したいと思っています。

 

「 風の音」2022.3.16

犬は強風の日、風を受けに田んぼに行く。小柄な犬は四本の足を踏ん張り、耳を立て歩く。立ち止まり、自然とひとつになろうとしているように見える犬に心を動かされる。私も共に風の音を聴きたいと思う(2022/41~4/15フォルムでの個展に寄せて)

 

「創作について」2022.5.17

 世界の混乱と悩ましい現実に憂鬱な日々が続いている。創作のテーマは人生の矛盾です。

最近、梱包用の段ボールに油彩でドローイングを始めました。この支持体は優しい抵抗感があり油絵の具の滑りが心地よく感じます。紙の持つ風合いを気取らず持っている色も好きです。そこに描いていくと段ボールと油絵の具がうまくマッチして独特の空間を作ってくれます。木炭は上手く紙にのらないので作為が散らばり自由な線になります。不自由から自由ができるような感覚です。筆も禿げたものの方が面白いように感じます。